峯岸利恵の音楽手帖

好きな音楽や日常にまつわるあれやこれやそれです

2017.01.28 39degrees 「Reunite at that place TOUR 2016-2017 FINAL」@TSUTAYA O-WEST ライブレポート

 

 

私はO-WESTで観るメロディックバンドのライブが好きだ。

 

バンドの目標であり、どでかい通過点――このライブハウスにそんなイメージを持っているからか、ここで行われる節目のライブは自分にとって想い出深いものが多い。

そしてこの日もしっかりと胸に刻まれた、大好きなメロディックパンクバンド兼、自慢の高校の後輩の最高の晴れ舞台。

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「出会った頃はカッコいいと思えなくてさ、拳上げろって言われても上げようと思えるライブを観たことがなかった。でも段々「上げろ」って言われなくても自分の拳が自然と上がっていくのを感じて、ああ俺、39degreesをカッコいいと思っているなと確認できたんだよ」

 

「俺は、アイツらが島国根性丸出しで泥臭く拳上げろー!とか言ってるのが大好きで。そんなやつらが、本物の、嘘じゃないパッションでシーンに対してガツガツやってくれているのが本当に嬉しい」

 

--「失敗は成功の基」とはいえ、恥ずかしい思いはできるだけしないで手っ取り早くカッコ良くなりたいし、焦燥感や劣等感は抱きたくないと思うのはきっと正直なところだ。

けれど、憧れの先輩であるCOUNTRY YARDとNorthern19が贈ったそんな言葉に、曲げない信念を持てば見続けてくれる人は絶対に現れること、39degreesは必要な過程を一切端折らずにここまで来たんだということをひしと感じた。むしろショートカット無しの泥塗れの道でなければ、この夜には辿り着けなかったのだと思う。

そんな大先輩が渾身のライブで繋いでくれた、片手で受け取るなんて到底出来ない極太なバトンを受け取ってステージに現れた、ばんちゃん(Vo/Gt)、くりちゃん(Ba/Vo)、そしてばくくん(Dr)。

「やってきたことを、バカ正直にやりに来ました。THE NINTH APOLLO、東京都町田市、39degreesです。昔の話をしに来たつもりでも、未来の話をしに来たつもりでもありません。今を歌いに来ました」といつも通り堂々とした挨拶したくりちゃんと、ファイナルの舞台といういつもとは違う雰囲気に思わず深呼吸をしてしまいフロアを和ませるばんちゃん。その様子を見たくりちゃんが「おい、笑われてんぞ」と早口で突っ込むと、間髪なく“Reunion”のイントロを伸びやかに歌い出す。

「ただいま!全国のライブハウスを巡ってこの場所に帰ってきました!おいお前ら!心のスイッチ入れていこうぜ!」という叫ぶばんちゃんの姿に、彼が最初に感じた一抹の緊張感なんて一音鳴らした途端に吹き飛んでしまったんだなと安心したし、ペース配分なんて言葉は彼の中にはないのだろうなと思わせる程の勢いで叩かれるばくくんの強烈なドラミングには、激しく胸を打たれつつも安心させられた。

そんな39degreesの関係性を羨ましいなと思いながら、締めるところは締める人、抜くところは抜く人、言葉は発さずともどしっと支えてくれる人がいるというその絶妙なバランスが大舞台でもきちんと醸し出されていることにもまた安心した。

 

そんな3人が搔き鳴らした“At Peep Of The Day”で早々に崩壊したフロアは、オーディエンスの興奮が故の奇声と共に始まった“azalea”によって修復完全不可状態になった。ダイブモッシュの嵐で滅茶苦茶になっているにも関わらず、心の底から楽しそうな顔をしているオーディエンスしかいないその雰囲気を感じて、これがメロディックパンクの真髄だなとたまらなく嬉しくなった。好きな曲のイントロが鳴った瞬間に身体より先に本能が反応して無我夢中になる。その衝動で跳ねる心と身体がぶつかり合う光景を、怖いだとか危ないだなんて言えるわけがない。

 

そして扶養も外れてなければ免許もないというばんちゃんの独壇場(という名のMC)では、「ツアー中の最高に泣ける話」という名目の元、機材車が大破した挙句、泊まったホテルで風呂上がりのびしょ濡れの状態で部屋から締め出されるという話で相変わらず笑わせてくれた。話の運び方の上手さに抱腹したMCを「めちゃめちゃベタな話になってしまいますが、バンドを志した頃の自分に見せてあげたい光景ですし、感じてほしい一日になってる。感動している俺たちを見て感動してほしい」とまとめ、「熱い気持ちを呼び起こさせるのがメロディックパンクだと信じています、みんながもう少しだけでも拳を上げてくれたら完成する気がするんだ!」と‘‘Heartrending”へと全身全霊で突入した。

 

とはいえ、彼らは気付いているのだろうか。

「拳を上げろ!」と言われる前に、フロアの拳は上がっていることに。

「歌え!」と言われる前に、フロアのシンガロングは始まっていることに。

 

この絶景を作り上げたのは紛れもなく3人の軌跡であり、3人が鳴らす音、3人が紡ぐ言葉、3人が燃やし続ける数多の想いが聴く人の気持ちを動かした結果に他ならない。‘‘It’s my fault for believing you”‘‘Clues is your beside”の連続技にはいつだって胸が高鳴るし、‘‘Ery”や‘‘Freesia”が醸す切なさや哀愁にはいつだってときめかされる。

二階席から広く見渡せたその光景が、彼らがバンドとしてのひとつの到達点にこの日辿り着いたのだと確信させてくれた。

 

そんな最良の日を共に作り上げてくれた先輩への感謝を「この2バンドがいなかったらここまで来れなかったと本気で思います。一日で返せる恩ではないので、長く続けてゆっくり返していきたいと思います」と言葉にし、“Where there’s hope, there’s life”で本編を堂々と締め括った。

 

そしてバンド史上最多の61本のライブを経て完結したリリースツアーを振り返り、「これが終わりではなく始まりだから」と新たな一歩を踏み出す強い意志をアンコールの‘‘The Answer”と‘‘Not In My Lifetime”に託した39degreesを、鳴り止まない大喝采が見送った。

 

 

■セットリスト

01. Reunion

02. Clarification

03. At Peep Of The Day

04. The Birth.(Six Day Trip)

05. azalea

06. I’ll be right here

07. Heartrending

08. It’s my fault for believing you

09. Clues is your beside

10. Against Elegies

11. S.C.S

12. Ery

13. Freesia

14. Where there’s hope, there’s life

 

En

01. The Answer

02. Not In My Lifetime