峯岸利恵の雑記帳

峯岸利恵の好きな音楽にまつわるあれやこれやそれです

BIGMAMAと嘘と

2017年2月10日に恵比寿LIQUIDROOMにて行われたBIGMAMAの原点回帰的ライブ「THE  BIGINNING 2007.02.10」のラストに金井さんの口から「ささやかなお知らせ」として発表された、2017年10月15日、キャリア初の日本武道館公演。

 

正直言うと、発表内容にはさほど驚きはしなかった(事前に何かしらの発表を匂わせていたこともあり)。アニバーサリーイヤーだし、きっと武道館公演かメジャーデビューだろうなぁとは予想していたので「やっぱりか!」の方が大きかった。そして個人的にはその内容以上に、その発表の《仕方》に「アアア!」となっていた。

いや「ささやか」って…絶対早く言いたかったでしょうに…ライブ中も気が気じゃなかったんだろうなぁ…照れもあるのだろうけれど、歓喜の想いを押し殺して変にカッコつけちゃって…きっと一人になったらニヤッとしてるんだろうなぁ…素直に「聞いて!武道館だよ!やっとだよ!嬉しい!絶対来て!」と万歳すればいいのに…本当に、そういうところだよ…そうしちゃう気持ち、死ぬほど分かる……。

 

ここで少しばかり話が脱線します。

私がBIGMAMAを知ったのは約9年前、『Weekly Faily Tale』がリリースされる数ヶ月前で当時20歳、あまりに好きすぎて全ての悪事を許していた当時の彼氏が貸してくれた『Love and Leave』がきっかけだった。(後に「付き合うのは正直誰でも良かった」という理由で3ヶ月くらいで振られる) 当時は「拗らせている」や「メンヘラ」なんて言葉は浸透していなかったけれど、この時は完全にそれだった。というより、「聞き分けの良い自分」を演じるのに精一杯だった。「本当の自分が分からない」なんてよくある台詞だけれど、まさにそのドツボにはまっていたし、あの頃は「相手の為に私が我慢すればいいんだ」と自己犠牲を振りかざし、本音をひた隠しては自分にも相手にも嘘ばかりついていたんだなぁと今になれば思う。

 

 そしてその時期からよく聴いていたのが、BIGMAMAの「We have no doubt」だった。英詞も和訳もすぐに浮かぶし、ライナーノーツは穴が開くほど読んだ。《僕は嘘つきだから君の嘘は大体分かる》ではないけれど、だからこそ冒頭で触れた「ささやかなお知らせ」から読み取った心境を自分に容易く重ねてしまえたのかもしれない。

 

長く書いたけれど、とどのつまり、わたしの音楽人生の原点及び人格形成の片棒はBIGMAMAであり、金井政人が描くお伽話のような絵空事であり、「We have no doubt」であるということ。 人を悲しませる方にも人を喜ばせる方にも、どちらの「嘘」に対しても常に誠実なバンドだったからこそ、わたしはBIGMAMAの音楽に対していつも誠実でいることができた。売れる売れない、踊れる踊れない、流行る流行らない、器用不器用それら一切関係なく、その「嘘にも正直」という絶対的な信頼があったからこそ何年も変わらずに惹かれ続けているのだと思う。

 

待ちに待った武道館公演の中で、金井さんは「聴いてくれる人を全員幸せにすることはできないけれど、不幸を遠ざけることはできるかもしれない」と話していた。(約30分に渡るバンド解散前の独白にも似たMCの中から極々一部を抜粋) それは謙虚な訳でも逃げでもなく、BIGMAMAがこの10年で見出した「最も正確で、正直で、正しい、誰にも嘘をつかなくて済む距離」なのだろうなと思う。 そしてそれをMCやインタビューで話す「金井政人の言葉」ではなく「CRYSTAL CLEAR」という曲で「BIGMAMAの音楽」として新たに残してくれたことがたまらなく嬉しかった。

 

幸せにできる人間は一人しかいなくて、その一人を大切にするためには今から誠実でないといけない。もしかしたらその「今」でさえ、既に手遅れかもしれない。《それでも僕ら、約束をしようよ》--その約束を、節目になるあの場所ですることができて良かった。メンバーを着席させても言いたいことスマートにまとめることもできず、曲の入りもグダりながらも、そういうダメなところをひっくるめて、ああ、聴けて良かったなと思う。

 

念願の日本武道館公演にて、新たに「ささやかなお知らせ」として語られたメジャーデビュー。下北沢から青山に行こうとも古参ファンだと言われようとも、いつまでも親離れはしないつもりです。来年からのツアーが今から楽しみ。